本記事はとても長いため、ナカボーテックにあまり興味がない方は要約ページをご覧になることをお勧めしています。
以下が調査結果詳細です。
事業内容
概要
ナカボーテックは金属およびコンクリートの構造物の腐食・劣化を防止する工事を主な事業としています。同社の主力工事は港湾施設の防食工事であり、その大部分が電気防食に用いるアルミニウム合金陽極の取り付け工事となっています。同社は事業をほぼ国内で行っています。
防食工事の原理や施工方法については以下のページが詳しいです。
同社の事業セグメントは防食工事の対象によって「港湾」「地中」「陸上」「その他」の4つに分類されており、それぞれ以下の表の設備を対象としています。
セグメント | 防食対象 |
---|---|
港湾 | 港湾施設及び船舶等(岸壁、桟橋、護岸、沖合構造物、防波堤、取水・放水施設、沈埋トンネル、生簀、船体外板、浮体構造物、バラストタンク等) |
地中 | 地中埋設施設及び地上・地下タンク等(ガス、水道、農業用水、工業用水、石油等の埋設管、タンク底板、地下タンク、基礎杭等) |
陸上 | 陸上施設及びプラント装置等(復水器、熱交換器、冷却器、ポンプ、バルブ、スクリーン、淡水化装置、水門、ダム・堰、河川構造物、タンク内面・外板、温水器・貯湯槽、水処理施設等) |
その他 | 鉄筋コンクリート構造物等(岸壁、桟橋、護岸、橋脚、橋梁等) |
有価証券報告書より表を作成
以下は2021-3期のセグメント別の売上および利益構成です。
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港湾事業から全体の6割の売上と利益を得ています。
事業の特徴
同社の事業の特徴は構造物に関する防食技術に特化しているという点にあります。したがって以下が重要と考えています。
- 国内において構造物、特に港湾施設の防食需要が今後どうなっていくのか
- 防食技術に競争力があるのか
港湾施設に対する防食需要について具体的な数値を入手出来ていません。しかし、建設後50年を経過するような港湾設備は少なくとも2011年~2040年にかけて急激に増加するため需要の下振れリスクは小さいと評価しています。以下は国都交通省がまとめた港湾施設の老朽化進捗に関する資料です。
国土交通省 港湾施設の維持管理に関する技術講習会資料 資料2-4 p1より引用
また、競合他社に関する情報を入手することが出来ませんでした。しかし、2021-3期の受注工事高のうち66.5%が特命受注であり、競争環境は悪くないのではないかと考えています。
おそらく以下が理由だと考えています。
- 電気防食に用いるアルミニウム合金陽極の取り付け工事がニッチな分野でライバルが少ない
- 工事全体の費用と比べると防食の費用は少なく費用原因での競争が発生しにくいため、既存顧客が同社を再び選んでいる(だったら変えないほうがが安心)
業績推移
売上と利益
以下のグラフは売上と営業利益率、営業利益、純利益の推移です。
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売上はやや増加、利益は横ばいだと評価しています。2021-3期の営業利益率は9.8%あり高いです。港湾設備の老朽化進捗を考慮すると売上と利益が増加し、成長していく可能性はあるように思います。
セグメント別の売上と利益
以下はセグメント別の売上構成および増加量です。
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港湾事業の売上が増加しています。他は横ばい。
以下はセグメント別の利益構成および増加量です。
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港湾事業の利益は横ばいと保守的に評価しています。他も横ばい。
主要事業の中では港湾事業のみ売上が成長しています。
以下はセグメント毎の顧客別の完成工事高です。
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港湾事業の官公庁向けの完成工事高が大きく増加していることがわかります。他はおおよそ横ばいです。
資産
以下のグラフは総資産と自己資本比率の推移です。
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総資産は増加しています。自己資本比率も上昇傾向にあり、2021-3期の自己資本比率は66%と高い水準です。
以下のグラフは資産の内訳推移です。
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有価証券・保険などは「関係会社預け金」です。三井金属鉱業に対する預け金であり、必要な時に引き出しができるため現金同等物と考えても差し支えありません。総資産のうち現金と売掛金が大半を占めています。売掛金のほどんどが完成工事未収入金です。同社の売上の6割は官公庁からのものであり与信リスクは小さいです。
以下のグラフは負債の内訳推移です。
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大半が自己資本であり、自己資本が積みあがっています。有利子負債はありません。
以下のグラフは自己資本の内訳推移です。
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利益剰余金の増加によって自己資本が積みあがっており健全です。
キャッシュフロー
営業CF
以下のグラフは営業CFの推移です。
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営業CFは横ばいです。
投資CF
以下のグラフは投資CFの推移です。
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投資CFはほぼ設備投資です。設備投資は主に有形固定資産の取得で、営業所や防食資材の生産設備・研究開発用の設備に対して投資しています。
財務CF
以下のグラフは財務CFの推移です。
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ほぼすべて株主関連です。
以下は投資CF中の株主に関するCFの内訳です。
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配当と自己株式の取得です。配当は増加傾向にあり、近年では自己株式の取得を行っています。ただし、取得した自己株式は消却していません。
全体
以下のグラフは各種CFおよび現金同等物と有利子負債の推移です。
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営業CFはプラスですが横ばいです。有利子負債がなく、現金同等物が非常に多いです。近年では配当や自己株式の取得を増やしており、株主還元に力を入れています。
まとめ
ナカボーテックの2021-3期の売上は130憶円、営業利益は13億円、営業利益率は9.8%でした。売上は官公庁向けの港湾事業が成長している一方で、利益は横ばいと保守的に評価しています。
主力工事である港湾施設の防食工事については公共需要が底堅いと予想されており、全体の受注額の6割程度が特命受注で競争環境もよさそうです。おそらくニッチな分野で更に競合が少ないのだと思いますが、業界に関する情報が入手できずこれは憶測です。もうすこし、業界の情報があればもう少し深堀することが出来そうなのですが、現段階の自分ではこれが限界です。
港湾設備の老朽化が進捗するのはまだまだこれからなので上振れる可能性はあるのかなと思っています。
今回はここまでです。